成年後見

成年後見人の就任直後の職務

 

後見開始の審判と確定

後見開始の審判がされると、家庭裁判所から成年後見人に告知がされます。
この告知の到達から2週間の間に異議申し立てがなければ、2週間の経過により審判が確定します。

審判が確定すると家庭裁判所からの嘱託により後見登記がされます。
後見登記ファイルには、審判をした裁判所、事件の表示、確定年月日、本人の氏名・住所・生年月日・本籍、後見人の氏名・住所が記録されます。
後見監督人が選任されている場合は、後見家監督人の氏名・住所も記録されます。

審判書と共に届く資料

審判書と共に、「初回報告書の用紙」「財産目録作成の用紙」が送付されます。
申立に関わらなかった第三者後見人には「本人の財産、生活状況、親族関係」の資料も送付されることがあります。

 

登記事項証明書の取得

登記事項証明書は法務局の戸籍課の窓口で取得することができます。
収入印紙550円で取得することができます。
登記事項証明書は金融機関での手続きなどで使用します。

 

財産の調査

家庭裁判所から送られてきた資料、郵便物などの情報をもとに、何の財産がいくらあるのかを調べて財産目録にまとめます。
本人が独居で在宅生活を送っていた場合などは、申立て時の資料で財産がはっきりしない場合もあり、このようなケースは調査が困難になる場合もあります。

 

生活状況の調査

本人に面会して、健康状態などを確認します。
本人が施設に入所していたり、病院に入院している場合はソーシャルワーカーが窓口になります。
施設や病院での本人の状況を確認し、何か変化があった際には連絡をもらえるように関係をつくります。
本人が在宅生活を送っている場合は、介護・福祉サービスの利用状況を確認し、ケアマネージャーなどと連携できるようにします。

 

預金通帳などの引渡し

施設や親族から預金通帳などの財産関係書類の引渡しを受けます。
印鑑、保険証券、年金証書なども合わせて引き取ります。
引渡しを受ける際は引渡し確認書などを交付しておきます。

本人が預金通帳などを管理していた場合は、本人の拒否が強い場合など、引渡しを受けるのが難しい場合があります。
本人の認知症の進行予防等のため、一部財産の管理を本人に任せることもありますが、日用品の購入など少額に留めておく必要があります。

健康保険証、介護保険証、障害者手帳などは、施設や病院で管理した方が良い場合もあります。

 

債務の調査

預金通帳の引き落としや督促状などの郵便物等から、債務を調査します。
債務については財産目録の債務欄に調査結果をまとめておきます。
債務調査の結果、訪問販売業者から高額な商品を購入していたなど、対処が必要な案件が判明することもあります。

 

収支予定表

本人の年間の収入と支出の見込み額をまとめた収支予定表を作成します。
収入は、公的年金、生命保険等の年金型給付、不動産収入などが考えられます。
預金通帳の記帳、郵便物や契約書等から内容を確認することができます。

支出は、税金、健康保険・介護保険料、施設使用料、入院費、公共料金、生活費等で領収書や、預金通帳の記帳内容から確認することができます。

収支予定表を作った結果、収支状況が悪い場合は施設の移動や支出の調整などの対応を検討が必要な事項が明らかになる場合があります。

 

家庭裁判所への報告

調査結果を財産目録、収支予定表、報告書にまとめ、家庭裁判所に提出します。
提出は就任後1か月以内に実施しなくてはなりません。
財産が多岐にわたるなど、1か月以内に調査を完了できない場合は、家庭裁判所の許可をえて報告期間を延長することができます。

後見監督人がいるばあいは、財産の調査及び目録の作成は後見監督人の立会のもと行わなければなりません。

財産目録の作成が終わるまでは後見人は急迫の必要がある行為しかできませんので、注意が必要です。

 

金融機関への後見人就任の届出

金融機関へ成年後見人に就任したことを届出します。
届出には、登記事項証明書、成年後見人の本人確認書類、成年後見人の印鑑証明書、その印鑑などが必要になります。
届出した以降は、金融機関との取引は成年後見人の名前で、成年後見人の印鑑で手続きするようになります。

また、手続きの際には判明している物以外の口座が無いか、残高証明書を取得するなどして同時に確認しておきます。

金融機関からの郵便物の届出先の変更、キャッシュカード発行も合わせて行います。

 

健康保険・介護保険に関する届出

後期高齢者医療保険保険者証、国民健康保険被保険者証、介護保険被保険者証、及びそれらの納付書や手続き書類などが成年後見人あてで送付されるように「送付先の指定届」を市町村役場に提出します。
本人が家族の健康保険の扶養家族になっている場合は不要です。

 

税金に関する届出

固定資産税、住民税などの納税通知書等の書類が成年後見人宛てに送付されるように届出をします。
市町村役場で納税管理者の届をすることで変更が可能です。

 

公的年金の届出

国民年金、厚生年金、共済年金にかんする通知などの書類が成年後見人宛てに送付されるように届出をします。
国民年金と厚生年金は年金事務所に備え付けの専用用紙で届が可能です。
共済年金は共済組合で同様に手続きをします。

 

その他の届出

生命保険会社、損害保険会社、証券会社等へも同様に通知などの書類が成年後見人宛てに送付されるように届出をします。
保険契約や取引内容についても同時に確認をしておきます。

 

郵便局へ転居届を提出

本人が入院しているなど自宅にいない場合は郵便物を病院などに転送するように転居届をだしておきます。
転居届による転送の期間は1年間ですので、注意が必要です。

 

自宅へ届く郵便物の管理

本人が在宅生活を送っている場合は、郵便物を成年後見人が管理できるようにホームヘルパー等と連携をとります。
成年後見人には本人宛の信書を開封する権限は無いとされていますので、開封前に本人に渡すなどの対応が必要です。

 

 

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