成年後見

成年後見人の財産管理職務

成年被後見人(本人)の財産管理は成年後見人の重要な職務です。
成年後見人の財産管理職務の実際について、財産の種類ごとに解説しています。

成年後見人による預貯金の管理

成年被後見人(本人)が開設していた預貯金口座については、就任後速やかに後見届出を行います。
後見届出をしても、預金口座の名義は成年被後見人(本人)の名義のままです。
預金引き出し等の手続きをする際には「A成年後見人B」と記載して、成年後見人の届出印鑑を使用します。

新規で口座開設する場合は、成年被後見人(本人)名義で開設も可能ですが「A成年後見人B」名義で口座開設することもできます。

公共料金、税金、健康保険・介護保険料、家賃、介護サービスの利用料、施設利用料などが預貯金口座から引き落としされるように手続きします。

預貯金残高が高額になる場合は、日常生活に必要な資金以外は定期預金にするなど、普通預金口座と分けて管理します。

 

成年後見人による小口現金の管理

切手代、交通費の支払いなどのため、少額の現金を後見人の手元で管理します。
支出は領収書を保管して、預金の管理と一体化させた現金預金出納帳で収支を記録します。

□成年後見人による有価証券の管理

成年被後見人(本人)が以前から保有している株式等について、後見人はこれを売却するなどの必要は原則としてありません。
試算の増加のため株式を運用したり、あらたに投資信託を購入するなどの行為は成年後見人の職務ではありません。

保有している株式の価値の低減が明らかに認められる場合に、売却などの対応をする場合は家庭裁判所と相談の上、対応するようにします

 

成年後見人による貸金庫の利用

高額な動産などは、後見人の手元で保管せずに貸金庫の利用を検討します。

 

成年後見人による不動産の管理

成年被後見人(本人)が居住している家屋の修繕や、庭の管理なども後見人が行います。
バリアフリー化など成年被後見人(本人)の生活に必要な範囲の工事についても必要に応じて検討します。
家族と同居している場合は、その修繕や工事が成年被後見人(本人)の為に必要なのか、家族の為のものか、よく確認をする必要があります。

成年被後見人(本人)が所有しているアパートなどの賃貸物件も後見人が管理をします。
修繕などの手配に加え、賃料の受取、未払い賃料の督促なども後見人が行います。
管理業務は不動産管理会社などに委託することも検討します。

施設に入所するなどして、空き家になった不動産の管理も後見人が実施します。
定期的に訪問して、家屋のいたみや庭木の状態などを確認して、必要に応じて修繕や清掃などの手配をします。

空き家に成年被後見人(本人)が戻る見込みがなく、管理に費用が掛かる場合は取り壊しや売却を検討します。

 

成年後見人による居住用不動産の処分

成年被後見人(本人)の居住用不動産の売却や賃貸などの処分を実施するには、家庭裁判所の許可が必要です。
居住用不動産の範囲は一般的なイメージよりも範囲が広いですので注意が必要です。

居住用不動産の例
・成年被後見人(本人)が現に居住している建物と敷地
・施設入居等で空き家になった建物と敷地
・以前居住していた建物を取り壊したあとの敷地(更地)
・建物敷地と接している敷地など

成年被後見人(本人)が賃借しているアパートなどの賃貸借契約の解約も居住用不動産の処分に該当しますので、家庭裁判所の許可が必要です。

また、成年被後見人(本人)名義の不動産に家族が債務者になっている抵当権を設定する場合も家庭裁判所の許可が必要になります。

居住用不動産を売却する場合は売却相手、売却価格などを契約相手と取り決めしてから、契約書、評価証明書、査定書、全部事項証明書等を添付の上、家庭裁判所に申立書を提出して、許可を申立てします。

家庭裁判所の許可のない売買契約は無効になります。

 

成年後見人による居住用不動産以外の処分

成年被後見人(本人)の生活資金等にあてるため、居住用不動産以外の不動産や、株式、高価な貴金属などを売却した場合は、家庭裁判所に報告が必要です。

成年後見監督人が選任されている場合は、その同意を得て売却を実施します。

 

成年被後見人(本人)の扶養負担

成年被後見人(本人)と生計を一にしている配偶者、未成年の子や障害をもて子などの扶養義務がある場合は、成年被後見人(本人)の財産から被扶養者の生活に必要な費用を支出します。

なお、配偶者に生活に必要な費用を賄える収入がある場合は成年被後見人(本人)が費用を負担する必要はありません。

成年した子供の扶養義務については、判断が難しい部分がありますので、家庭裁判所と相談の上、対応をするべきです。

 

成年被後見人(本人)の親族への介護報酬の支払い

成年被後見人(本人)が在宅で介護サービスを受けている場合に、介護サービスで賄えない部分を親族が介護をしていることがあります。

この親族による介護に対して、介護報酬を支払うことができる場合がありますが、その支出については家庭裁判所と打合せの上、方針を決定します。

 

成年後見人による税金の手続き

税金の納付も後見の職務になります。
確定申告が必要ば場合は税務署に確定申告をします。

確定申告が必要なケース(例)
・不動産賃貸収入や事業収入がある
・保険の年金型給付を受給している
・生命保険料控除や医療費控除を受ける必要がある
・公的年金等の収入が400万円を超えている
・公的年金等以外の収入が20万円を超えている

医療費には、介護保険サービスや施設費用も含まれます。
年金受給者は毎年1月ごろに源泉徴収票が送付されます。
成年被後見人は特別障害者に該当しますので、特別障害者控除を受けることができますので、毎年10月頃に年金支払者から送付されてくる扶養親族等申告書の成年被後見人(本人)障害欄は特別障害を選択します。

成年被後見人(本人)の財産状況を検討して、確定申告を税理士に依頼することも検討します。

 

成年後見人による公的助成の利用

成年被後見人(本人)の所得によって、公的助成を受けられる場合があります。
市町村長役場、病院、施設などに相談の上、必要な場合は手続きをして助成を受けられるようにします。
・病院や介護保険施設の食費・居住費の助成
・高額医療・介護サービス費、重度心身障害者医療費などの助成

 

生活保護の検討と申請

収支予定や財産状況を検討して、成年被後見人(本人)が最低限の生活を送るのに必要な収支を確保できない場合は、福祉事務所のケースワーカーに相談の上、生活保護の検討や申請を実施します。

 

 

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