成年後見制度とは
成年後見制度とは、精神上の障害により、判断能力が低下したため、適切な意思決定が困難な方を法的に支援する制度です。
成年後見制度には、法定後見と任意後見の2種類があります。
法定後見は、既に判断力が低下した状態にある方を支援するための制度で、家庭裁判所が職権で後見人等の支援者を選びます。
一方、任意後見は判断能力があるうちに、あらかじめ判断能力が低下したときに備えて自ら後見人等と契約をしておく制度です。
このページでは法定後見の申立て手続きについて、説明しています。
後見開始審判申立てができる人
成年後見の開始申立ては家庭裁判所に申立書と必要書類をそろえて提出しますが、申立てをすることが出来る人に制限があります。
本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、未成年後見人、未成年後見監督人、市町村長などが申立権者になります。
成年後見に関しては、すでに意思能力が低下していることから本人申立ては現実的な選択肢ではありません。
後見開始審判申立ての管轄裁判所
後見開始審判は本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをします。
申立に必要な書類を家庭裁判所の窓口に持参、又は郵送で提出します。
家庭裁判所によっては、あらかじめ予約の上、関係者とつれだって訪問して、即日面談が実施される場合があります。
後見開始審判を申立てることができる人
後見開始審判の申立てをできる人は民法で決められています。
申立てをすることが出来る人(一部)
・本人
・配偶者
・四親等内の親族
・検察官
・未成年後見人
・市町村長
・その他
成年後見では本人の判断能力が無いことが前提となりますので、本人申請は現実的な選択肢ではありません。
後見開始審判を申立ての必要書類
家庭裁判所によって、必要書類がことなります。
以下は高松家庭裁判所へ申し立てる際の必要書類の例です。
・申立書
・申立事情説明書
・本人情報シート
・医師の診断書
・本人の戸籍謄本
・本人の住民票(又は戸籍附表)
・後見人候補者の住民票(又は戸籍附表)
・本人の登記されていないことの証明書
・親族の意見書
・後見人等候補者事情説明書
・親族関係図
・財産目録
・相続財産目録
・収支予定表
・本人の財産・収支に関する資料(A4コピー)
・不動産登記事項証明書
・固定資産税納税通知書等
・預金通帳のコピー
・残高証明書等
・生命保険証書のコピー
・金銭消費貸借契約書等、負債についての資料
・施設利用料、入院費の領収書など
・相続財産に関する資料
・本人の健康状態に関する資料
・介護保険認定書、療育手帳、精神障害者保険福祉手帳など
後見開始審判の申立てにかかる費用
裁判所によって、取扱いがことなる場合があります。
以下は高松家庭裁判所に後見開始申立てする際の例になります。
・収入印紙(申立費用)800円
・収入印紙(登記費用)2600円
・郵便切手 3,700円(内訳があります)
・鑑定費用 5~10万円前後(鑑定が実施された場合のみ)
司法書士に申立て書類の作成、資料収集を依頼する場合は、司法書士報酬が上記と別にかかります。
また、戸籍、医師の診断書等の必要書類を取得する費用も別途必要です。
手続きにかかる費用はだれが負担するのか
申立費用は申立人の負担とするのが原則ですが、家庭裁判所の審判の際に申立人以外の方に費用を負担することを決めることができます。高松家庭裁判所の申立書のひな形には手続費用の上申として、手続き費用については、本人の負担とすることを希望する。チェック欄が設けられています。
ただし、申立て費用は、申立て手数料、送付代、後見登記手数料、鑑定費用に限られており、申立て書類に添付する資料の請求費用や、司法書士に支払う書面作成報酬はこの手続き報酬には含まれていません。
申立後の手続きの流れ
調査
家庭裁判所が提出された申立て書及び、添付書類を元に調査を実施します。
調査では、親族や本人との面談や電話連絡等が実施される場合もあります。
鑑定
家庭裁判所からの嘱託により医師による鑑定が実施されますが、鑑定が省略される場合もあるます。原則として、本人の判断能力の状況について医師による鑑定が必要ですが、鑑定の必要性がないことが明らかな場合には、鑑定をせずに審判がなされる場合があるとされています。
鑑定にはおよそ1~2か月の期間がかかります。
審理・審判
調査、鑑定の結果に基づき審判が出されます。審判の際には同時に成年後見人を選任します。
この際に、成年後見ではなく補助・補佐といった類型の審判がなされる場合もあります。
審判書謄本は本人・申立人等に送達されます。
審判確定
審判書謄本の送達から2週間は不服申し立て(即時抗告)できる期間になり、この間に異議申し立てがなされなければ、送達から2週間で審判が確定します。
成年後見人等の選任については不服申し立てすることができませんので、別の方を選任してほしいという理由での不服申し立てはできないことになっています。
だれが成年後見人になるのか
高松家庭裁判所の申立書ひな形には成年後見人等候補者を記載する欄があり、申立人が後見人を推薦することができます。しかし、この候補者が必ず裁判所の審判によって成年後見人に選任されるわけではありません。
事情等を家庭裁判所が総合的に判断して、別の方が選任されることがあります。
本人の長男を成年後見人候補者としていても、司法書士などの職業後見人が選任されることがあります。
申立から審判がでるまでの期間
高松家庭裁判所の標準的なケースとして、1か月から3カ月程度で審判がでるようになっています。
申立て書類の作成を司法書士に依頼するメリット
司法書士は裁判所に提出する書類の作成を業とすることができる国家資格者です。
上記のとおり、成年後見の申立て手続きは収集する資料も多く、段取りよく手続きを進めることは簡単ではありません。
成年後見開始申立ては一度、申立てしてしまうと取消することができません。
また、成年後見人に不正等が無い限り、親族の意思どおりの判断をしないといった理由で別の方に変えることもできません。
成年後見制度に対する不安や誤解があるままでは、希望する結果を得られないことも考えられられます。
申立てをされる親族のかた、また本人の健やかな生活をできるだけ速やかに実現するためにも司法書士に依頼することをご検討ください。
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