相続手続きは多くの人にとって初めて経験するものですが、手続きが複雑なため、正しい知識を持った上で行わないと、費やした「時間と労力」が無駄になるだけでなく、金銭的な部分で損をしてしまうことも少なくありません。
特に、働いている人にとっては昼間に役所へ行って書類を集めることは大変な場合が多いため、書類が足りずにやり直し…となってしまうことはできるだけ避けたいのではないでしょうか。
この記事では、相続手続きに必要な書類と手続きの手続きの注意点について詳しく解説します。
相続手続きで直面する問題を解消し、スムーズな相続手続きを行えるようにしましょう。
相続手続きで直面する問題とは?
相続手続きで多く見られる問題には、相続人同士が遺産の分け方に納得しないといった相続トラブルを想像する方が多いと思います。
しかし、実際に相続が発生すると、「何から始めるべきか分からない」、「どんな手続きが必要なのか」といった遺産を分ける前の事務手続きでつまづくことも少なくありません。
そもそも、相続は以下の流れで手続きを行うことが一般的です。
相続手続きは被相続人の遺産を分ける作業であるため、手続きが厳しく、書類不備や内容の間違いで手続きをはじめからやり直さなければならない場合もあります。
しかし、相続では条件によって行うべき手続きが異なるため、用意すべき書類なども様々です。例えば、図の「遺言書の有無を確認」で遺言書がなかった場合には「遺産分割協議書」という書類の作成が必要になることもあります。
そのため、それぞれの手続きを始める前に手続きの内容や準備すべきことを知っておくことが手続きのミスを減らすことにも繋がります。
相続手続きにおける事務手続きの問題を解消するために、相続手続きに必要な書類について詳しく見ていきましょう。
相続手続きの必要書類は
相続手続きの必要書類は「遺産の分け方」と「相続手続きの種類」によって異なります。
ここでは代表的な相続手続きである「預貯金の解約」と「相続登記」の手続きに必要な書類を「遺言書がある場合」、「遺産分割協議書がある場合」、「法定相続分で分ける場合」に分けてご紹介します。
遺産の分け方~遺言書、遺産分割協議書、法定相続分とは?~
遺産や相続財産とは、亡くなった方が残した「権利と義務」のことをいい、遺産の相続とは、これらの「権利と義務」を受け継ぐことをいいます。
相続が開始すると、被相続人の財産はいったん相続人の全員共有財産となりますが、
そのままでは各相続人の単独所有とならないため、相続人の間で遺産分割を行うことになります。
遺産分割はまず、被相続人が生前に遺言で指定する「指定分割」に従います。
遺言とは遺言者の最終の意思を示したもので、それを紙に書き記したものを遺言書といいます。
遺言書がある場合、相続手続きは遺言書に沿って進めるのが原則です。
遺言がない場合は、相続人全員の協議(=遺産分割協議)による「協議分割」により行うことになります。
この協議では相続人全員の合意のもとで遺産の分配方法が決められます。協議の結果は遺産分割協議書に記載します。
また、相続人の間で遺産分割協議がまとまらない場合などには、家庭裁判所の遺産分割調停を利用して、遺産の分け方が決めることができます。
相続人それぞれが財産を相続する割合は法律で定められており、この割合のことを法定相続分と言います。
なお、家庭裁判所で分け方を決める調停や審判では、原則として法定相続分に沿って遺産の分け方が決定されます。
預貯金の解約の場合
被相続人が生前に保有していた銀行等の口座は、銀行等に死亡したことを通知することにより凍結、つまり入出金が出来ない状態になります。
この凍結を解除し、金融機関に預貯金の払い戻しをさせるためには、預貯金の解約を行うことが必要になります。
取引金融機関が預金相続手続きを進める際に提出を求める書類は、以下の通りです。
ただし、相続の方法や内容、取引金融機関によって、必要となる書類が異なる場合がありますので、詳しくは取引金融機関にお問い合わせください。
遺言書がある場合
・遺言書
(・検認調書または検認済み証明書 ※公正証書遺言書以外の場合)
・被相続人の戸籍謄本
・相続人の戸籍謄本
・相続人の印鑑登録証明書
遺産分割協議書がある場合
・遺産分割協議書
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の印鑑登録証明書
相続登記の場合
相続登記とは、相続財産である土地や建物の名義を変更する手続きです。
この手続きを怠ると、その土地や財産の所有権を主張することができません。不動産は財産的価値が高いため、遺産相続の際にトラブルの種になりやすく、また、承継方法を間違えると、税金などの面でも大きな損をしやすいものです。
相続登記に必要な書類は以下の通りです。
※事案によって必要な書類は異なります。
遺言書がある場合(遺贈以外)
・遺言書
(・検認調書または検認済み証明書 ※公正証書遺言書以外の場合)
・被相続人の死亡時の戸籍謄本
・被相続人の住民票の除票
・相続人の戸籍謄本
・相続人の住民票
・固定資産評価証明書
遺産分割協議書がある場合
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・被相続人の住民票の除票
・相続人の戸籍謄本
・相続人の住民票
・遺産分割協議書
・相続人の印鑑証明書
・固定資産評価証明書
法定相続分で分ける場合
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・被相続人の住民票の除票
・相続人の戸籍謄本
・相続人の住民票
・固定資産評価証明書
相続手続きの注意点
それぞれの相続手続きに必要な書類をきちんと用意しても、以下の状況に当てはまる場合には、相続手続きが完了しないことや、追加の手続きが必要になることがあります。
期限に注意する
相続手続きは期限が設定されているものが多いです。
例えば、相続税の申告期限は被相続人の死亡から10か月以内と定められています。また、2024年からは相続登記が義務化されました。
どちらも、期限を過ぎてしまうと追加の税金や過料といった罰則が発生する可能性があります。
今回紹介したように、相続手続きでは多くの書類を準備しなければならないため、書類の準備に手間取って追加で費用が発生した、ということがないように、早めに手続きを始めることがポイントです。
相続人に未成年がいる場合
相続人に未成年者がいる場合、未成年者は遺産分割協議ができません。
よって、下記の2つの方法から選択しなくてはいけません。
① 未成年者が成年に達するまで待ってから遺産分割協議をする
② 未成年者の代理人が遺産分割協議をする
通常、未成年者の代理人は親なのですが、親子揃って相続人となるケースが多くあります。
このような場合、親と子供の利益が相反することになり、親が子供の代理人として分割協議をする事が出来ません。
また、子供だけが相続人である場合であっても、数人の子供を一人の親が代理することもできません。
このようなときには、未成年者一人ひとりのために特別代理人を選任して相続手続きを行うことになります。
特別代理人は家庭裁判所に選任を申し立てますが、この申し立てには個別の提出書類が必要となるため、専門家に相談をして書類の作成をおこなうことがポイントです。
まとめ
今回は相続手続きで必要な書類の一部をご紹介しました。
必要な書類を前もって知っておくことでほかの相続人からもスムーズに書類を集めることができ、相続手続きのペナルティを避けることができます。
また、「忙しくて相続手続きに必要な書類が集めることができない」、「書類はこれで合っているか不安」という方は専門家に相談することも重要です。
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